学長メッセージ令和5年度学位記授与式 学長式辞
嘉悦大学の卒業生、嘉悦大学大学院の修了生の皆さん、ご卒業、おめでとうございます。令和五年度の学位記授与式にあたり、本学の教職員を代表いたしまして、皆様に心よりお祝いを申し上げます。
皆さんは、新型コロナウィルス感染拡大の影響を大きく受けた学年です。学部生の皆さんに関しては、入学時に入学式も開催できず、1年後に入学式を開催することになりました。学内外でのマスクの着用はもとより、オンライン授業、課外活動や友人などとの会食の自粛という、大変厳しい時期もありました。キャンパスに共に集い、共に学ぶ時間を十分にもてないなか、ひとりでパソコンの画面に向かいながら、「これが入学前に思い描いていたキャンパスライフなのだろうか」と、心が折れそうになった日もあったと思います。
そうした苦境を乗り越えて、学業をまっとうし、この場に集っておられる皆さんの努力に、学長として、最大の敬意を表します。
また、この間、陰になり日向になり皆さんを励まし、支えてこられた、ご家族をはじめとする保護者・関係者の皆様にも、お祝いを申し上げたいと思います。
皆さんは、嘉悦大学で学業に精励し、校訓「怒るな働け」のもと、実学・実務・実践を3つの柱とする創造的実学教育を修められました。そして、ここに、それぞれ「学士」「修士」の学位を取得されたということになります。
皆さんは、無事に「学士」あるいは「修士」の学位を取得されたわけですが、実は、皆さんの人生はこれからが本番です。
嘉悦大学の創造的実学教育は、単に大学の卒業や大学院の修了を目指すだけの実学教育ではありません。また、自分の「得」になること、お金儲けにつながることだけを学ぶ実学教育でもありません。
卒業後に、皆さんが大学や大学院で学んだことを活かし、会社や社会で、上司や同僚など回りの人たちから「この人に任せておけば安心だ」と頼りにされる人材として活躍すること、そして、仕事や社会人としての様々な活動を通じて、皆さんや皆さんの子どもたちの生きる、未来の世の中を、より豊かで幸せな社会へ変えていくのに少しでも貢献すること、そうしたことのできる人材を育成する実学教育、これが嘉悦大学の創造的実学教育です。
私のこれまでの経験からいっても、自分の得になるかどうかといった狭い視野で仕事をしていても、長い目で見ると、自分の可能性は伸びていきません。「誰か他の人を幸せにできることをしたい」、「世の中を少しでもよくしたい」という、広い視野、「公を支える精神」で仕事をした場合に、人間は自分自身も気がついていなかった、自分の本当の潜在能力を発揮できるものだと私は考えています。
嘉悦大学は、今年で創立120周年を迎えました。120年前の1903年、明治36年に、嘉悦大学の前身である「私立女子商業学校」を創設した嘉悦孝先生は、「怒るな働け」という言葉を校訓にしました。嘉悦孝先生が「怒るな」という言葉に込めた思いは、こうした公共精神のことだと私は考えています。嘉悦孝先生は、嘉悦の学生の皆さんに、実学を学ぶことによって、自分のためだけではなく、世の中のために働ける能力と気概を備えた人材になってほしいと考えていた。そして、世の中のために、という広い視野で働くなかで、その人の潜在能力が花開くはずだと、嘉悦孝先生は考えていたのだ、と私は思います。
これから皆様は、社会人として様々な世界へ羽ばたいていかれるわけですが、その世界、社会は、たいへん厳しく、変化の激しいものです。特に、ウクライナとロシアとの間の長引く戦争、イスラエルとパレスチナとの間の悲惨な紛争、アメリカと中国との対立と中国経済の変調、世界的なインフレの発生、能登半島地震にみられるような大規模な自然災害の発生など、世の中はより予測不可能で、厳しいものになっています。世の中が厳しいものになればなるほど、余裕がなくなって、つい自分のことだけ、自分の「得」になることだけを考えてしまいがちです。そして、それは人間として当たり前のことです。
しかし、こうした厳しい世の中であるからこそ、ぜひ、皆さんには、自分の仕事を通じて、「世の中を少しでもよくしたい」、世の中に貢献していきたいという思い、つまり校訓「怒るな働け」の精神を忘れずに、今後の仕事に取り組んでいってほしいと思います。こうした姿勢が皆さんを最も成長させることになると私は思うからです。
皆さんには大きな可能性があります。より成長し、活躍する皆さんに、将来、お目にかかれることを楽しみにしています。
最後になりましたが、皆さんのこれからのますますのご健勝とご多幸を祈念いたしまして、私からのお祝いの言葉とさせていただきます。
改めまして、ご卒業、おめでとうございました。
令和6年3月13日
嘉悦大学学長 森本 孝