学生広報部レポート/世の中の面白いゼミナール(研究会)「内海ゼミナール」  世の中に出ていくために必要なことは?

学生広報部レポート/世の中の“面白い”を学問する現場から10 世の中の面白いゼミナール(研究会) 「内海ゼミナール」 ~世の中に出ていくために必要なことは?~   嘉悦大学では「世の中の面白いを学問する」をコンセプトに掲げ、「eスポーツマーケティング」や「炎上経営学」をはじめ、多くの講義やプログラムを実施しておりますが、学生広報部でもこれまで様々な魅力のある講義を取材させていただきました。しかし、嘉悦大学で「世の中の面白いを学問する」のは講義だけではありません。2年次からの専門ゼミナール(研究会)の活動でも、より深く追求していきます。 その中でも今回は人気の高い内海先生のゼミナールを学生広報部2年生の小林が取り上げたいと思います。   内海ゼミナールの概要 実際の企業活動を題材に、企業理解・経営のプロセス・マーケティングリサーチ・プレゼンテーションについて学んでいきます。 ・企業理解 マーケティングリサーチからマーケティング実践というビジネスの全行程を学習しその工程を卒論にまとめます。 ・経営のプロセス ビジネスプロセスや経営理念をじっくり学びます。 ・マーケティングリサーチ 「お客様の求める味は?」などの顧客ニーズを実際の店舗に訪問し、来店するお客様や接客の様子、店舗レイアウトなどを観察、サービスの研修などを行います。 ・プレゼンテーション マーケティングフレームを用いて、仮説立てやリサーチ、課題設定を行い、新業態を考え企業の方へプレゼンなどを行います。   なぜフードビジネスなのか

小林: なぜ、フードビジネスを題材にマーケティングを教えようと考えたのですか?

内海: フードビジネスは一番身近なので想像がつきやすく、題材にしやすいわけですよね。身近だからこそ、いろんな人がそこでビジネスをやっていて、実はとても奥が深く、マーケティングで大事にされている考え方が全て当てはまります。 商品を作るときの考え方や、お店を出すときの考え方、SWOT分析(*1)あるいは3C 分析(*2)、4P 分析(*3)など「考え方のフレーム」がフードビジネスはどんなシーンでも出てきます。 ですから、マーケティングを学ぶ上では非常に理想的なイメージしやすい凄くいい題材だと思っています。なので、(ゼミナールでは)フードビジネスそのものを追求して、その業界に進んでいくというよりは、フードビジネスを通じてマーケティングを学び、世の中に出たときにどんなシーンでも生かせる「考え方のフレーム」を身につけてほしいなって思っています。

*1 SWOT分析 SWOT分析とは、自社の環境を4つのカテゴリー・S=強み(Strength)・W=弱み(Weakness)・O=機会(Oppurtunity・T=脅威(Threat)の観点から分析し、経営戦略立案の材料とするフレームワーク *2 3C分析 Customer(市場・顧客)、Company(自社)、Competitor(競合)という3つの「C」 について整理し、自社の独自性を考察するフレームワーク *3 4P分析 Product:どのような製品・サービスを提供するのか  Price:その製品・サービスをいくらで提供するのか、どのようなチャージ方法か  Place(Channel):その製品・サービスをどのように提供するのか Promotion:その製品・サービスをどのように販促するのか、プロダクト開発の際にもれなく検討するフレームワーク   具体的にやっていることは?

小林: 内海先生のゼミナールではどのようなことを行っているのですか?

内海: いまはコロナ禍でフィールドワークが難しいので、オンライン上や、学校の中でフードビジネスのことを学んでいます。また、フードビジネスで必要となってくる商品、メニュー、店舗づくりを自分たちで考えて、嘉悦大学の提携先である株式会社プロントコーポレーション*(以下プロント社)役員の方に向けたプレゼンの準備をベースに活動しています。

*株式会社プロントコーポレーション PRONTO・CAFFE SOLARE・IL BAR・espressamente illy・Di PUNTO・È PRONTO等のカフェ・バーを中心に企画・運営・経営・及びフランチャイズ展開とコンサルティングを行う株式会社

小林: 「学校の中で」とのことですが、ゼミの時間中は講義のような形で進行しているのですか?

内海: 講義という感じで普通の授業のようにみんなが並んで机に向かう授業スタイルはたぶん1回もやっていないかもしれないですね。テーマだけ与えて、チームを組み、「今日はこのテーマについて自分たちで調べて考えて発表する」という形でやっています。

小林: それはフードビジネスに関するテーマについてゼミ生が調査する形ということですか?

内海: もちろんフードビジネス中心ですが、それ以外のテーマにも取り組んでいます。私は一度社会人を経験してから大学の教員になっているので、社会で必要な力を身につけるというのを一番大事にしています。私はフード業界の専門家ではありませんが、前職でフードサービスの経営者から起業経営についてどっぷり学ぶ機会や消費者のニーズを掴んでサービスを考える機会をいただき、そのときに得た知識や経験がすべての業務で生かせるという実感があります。なので、フードビジネスを中心としたテーマにしています。 しかし、たとえ会計士であっても、公務員であっても、サービスを利用するお客様がいるわけで、基本的に世の中に出ると、「誰かのためや、何かのために、価値を発揮する」ということが生きるために必要なことだと思っています。これだけはフードサービスであってもなくても一緒だと思います。フードビジネスを極めるというよりはその手前の、「社会に出てからの力」を大学時代に少しでも身につけて欲しいというのが大方針で、そういったテーマで日々ゼミの活動を行っています 。

小林: 具体的に何をしているか教えてください !

内海: 2年生には3年生と一緒に「プロント社のメニューが他の競合店と比べて強み弱みはどこなのか」ということを調査させています。コロナ禍の影響により全員で店舗へ行けないため、単独でプロント社と競合だと考えるお店の商品をテイクアウトして、実際に食し、比較するということを行いました。後から聞いたら、お店からそれぞれテイクアウトしてきた商品を、Zoomで集まって試食会をしたようです。食べながら、様々な観点で比較して「ここが強みだ、ここが弱みだ」と議論し、資料に落とし込み、その内容をゼミナール内でプレゼンします。3年生には主にフレームワークを使ったファシリテーションや、ストーリー監修をお願いし、資料作りと発表は2年生が行うことにしています。その役割分担は、結構ぶれずにやっています。 

小林: 今までのゼミナール活動で一番盛り上がったことは何ですか?

内海: 4月に3年生が2年生を歓迎するためのおもてなし企画を準備してくれ、オンライン(zoom)による歓迎イベントを実施しました。その後、今度はそのお返しに2年生が3年生に「これから就活頑張って」という「3年生就活頑張れ企画」を行いました。対面授業のタイミングで、2年生が4チーム(それぞれ別の教室)に分かれ、それぞれのチームが3年生におもてなし企画を行うということを実施しました。 そうすると、なんと2年生が考えた企画の方が3年生より面白かったりして、3年生にはもっと頑張ってもらわないと!という状況になったんです。 2年生が想像以上に事前に作りこんできてくれて、動画やカジノ、難しいクイズを企画して小さな学園祭のようなものが教室で繰り広げられていました。私のゼミナールは何かを企画したら必ず順位を付けてランク付けをしているのですが、最終的に一番面白かったのはどこかを3年生に投票してもらった結果、今回優勝したのは2年生のカジノを企画したチームでした。この企画を通して、2年生と3年生との距離も近くなり、一番盛り上がったと思います。

  身につけて欲しいこと

小林: ゼミナールの活動を通して学生に身につけて欲しいことは何ですか?

内海: 卒業したら、机に向かっていれば誰かが教えてくれるという世界ではありません。社会に出たら自分で考えアイディアを出して、それを人に伝えることの繰り返しになるので、その2つ(アイディア力と伝える力)に尽きるかなってと思っています。 また、学生の方からも「自分たちはこういったことを身につけたい」というの意見があり、今年の2年生にはゼミに入った理由や身につけたいことについて議論してもらいました。 私のゼミナールでは、学年ごとにゼミのテーマを決めてもらい、そのテーマを踏まえ、今年はこれをやってみようか、と一緒に考え、取り組んでいます。その中で出てきたのが、「コミュニケーション力」「切磋琢磨」「挑戦」「積極性」「対応力」で、(これらの)テーマでゼミナールの活動をしています。なので、「切磋琢磨するんじゃないの?」っていうとみんな火がついてくれています。

小林: ゼミ生が社会に出てからの力を身につけるために、具体的になにをやっていますか?

内海: 2年生、3年生と学年を追うごとにレベルアップして欲しいと思っています。現状2年生では、主に2つの事に取り組んでもらっています。 1つ目は、自分で考えるためマーケティングで使うような3C分析や4P分析など、いくつかの「考え方のフレーム」を覚えていくこと。こういったフレームを使わずに、アイディアを考えてもらうと結構抜け漏れがあります。ほんとに消費者のこと考えているの?それはどこに置くの?誰のためにやるの?どんな値段でやるの?など、そういった考えの抜け漏れをなくすために、考えるフレームを見て覚えて考えていくことが大切です。 2つ目は、考えたことをちゃんと伝えられる力を身に着けます。プレゼンテーションがそうです。考えるフレームとそれを伝えるためのプレゼンテーション、この2つの基礎スキルを2年生のうちには学んでほしいと思っています。また、それを学ぶ上では、必ずグループワークで学ぶような仕掛けにしています。

  ゼミナールでやる意味

小林: フードビジネスを講義ではなくゼミナールでやる意味って何ですか?

内海: ゼミナールってすごく専門的に学ぶチャンスだと思います。専門性でいうと今回はプロント社という企業と一緒に取り組んでいます。その企業が自分たちのビジネスに学生が入ることを了承してくれているわけですよ。店舗に出向いたり、企画を提案したりすることにより企業とのかかわりをより丁寧にしなければならなく、また専門的に学ぶ意思がある人じゃないと企業も時間の無駄になってしまいます。 少し興味があるから、必修の授業なのでという感じではなく、やっぱり興味ある学生がしっかり時間を使って企業と向き合い、深く学ぶことはゼミナールでしか出来ないことだと思います。 実際に今後インターンなどもありますし、その時に失敗するとお客さんに迷惑をかける可能性もあるため、講義形式ではなく、じっくり学べるゼミナール形式で取り組んでいます。

  世の中の面白いとの繋がり

小林: 最後にフードビジネスを学ぶことと「世の中の面白い」はどのように繋がると思いますか?

内海: フードビジネスそのものというよりは、働くことや世の中に仕掛けていくことがすごく面白いってことに気づいて欲しいです。普段我々はサービスを使う側じゃないですか。「いや、その反対側の立場に立った方が面白いよ」と。こんなお店を仕掛けよう、こんなメニューを仕掛けようなど。みんなが、アイディアを出したい!企画する仕事をしたい!と感じてくれればいいなと思います。(その入り口として)世の中に仕掛けていくことの面白さを学んでほしいと思います。

  今回お話を聞いた先生 担当教授:内海 健宏(うつみ たけひろ) 大手人材サービス企業にて、HRメディア商品企画・斡旋商品企画ハイプロフェッショナル、HRメディア運用企画マネジャーを担当。これまでのキャリアを活かし、マーケティング論や流通論の教鞭をとりつつ、インターンシップやキャリア教育にも幅広い見識とネットワークを発揮。学生にじっくりと向き合い、対話し、学生自身が本気で描くキャリアデザインをサポート。   終わりに 今回は約50分という短い時間の中で沢山の興味深いお話を聞くことが出来ました。内海先生のゼミナールでは、フードビジネスを題材として世の中に出ていくためにとても大切なことを学んでいることが今回のインタビューで分かりました。 私は業界ごとに必要な力はそれぞれだと思っていましたが、今回のインタビューで業界が違っていても必要な力には共通するものがあると教わることが出来ました。 ここには掲載できなかった、内海先生のゼミナールを受けている学生の感想や内海先生がこれから行おうとしていることはまたの機会に。

文責:学生広報部 小林 奈菜(嘉悦大学 経営経済学部2年)

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