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大学院便り 第55回

大学院便り 第55回 2017年5月11日
「教育国債のすすめ」

  高橋 洋一
  嘉悦大学大学院教授 

 

 yoichi takahashi

 教育無償化について、5月3日、安倍首相が憲法改正の例として取り上げたので、各党の本格的な検討が加速してきた。5月10日、自民党の教育再生本部の恒久的な教育財源確保に関する特命チーム (馳浩前文部科学相・主査)の要請で、筆者は教育投資の話をした。

 「知識に投資することは、常に最大の利益をもたらす(An investment in knowledge always pays the best interest.)」というベンジャミン・フランクリンの名言がある。

 教育を投資として捉えると、社会的な便益もコストより高い。教育によって、国民の将来所得が増加。将来所得が財源となるからだ。これは、国際機関などで多くの研究がなされている。だからこそ、国債で財源を賄うのがいいとなる。しかも、実は、この考え方は以前から財務省の中にも存在していた。

 ちなみに、OECD(経済協力開発機構)では、いろいろな教育に関するデータを国際比較の形で毎年公表している(Education at a Glance 2016 http://www.oecd-ilibrary.org/education/education-at-a-glance_19991487 )。

 その中で、先進国における高等教育投資の便益とコストを私的・公的に算出したものがある。私的な便益は高等教育を受けると所得が高くなることなどである。公的な便益は高くなった所得から得られる税収増などだ。それをみると、日本の公的なB/Cは他国よりず抜けて大きいので、公的投資の余地が大きい。

 簡単にいえば、有形資産も無形資産も、経済発展のためには欠くことができないものなのだ。しかし、今の財政法では有形資産の場合にしか国債発行を認めていない。政治的な議論をするのであれば、この財政法を改正して、無形資産の場合にも国債発行を認めるべきとなる。

 教育国債については、経済学的にはまったく否定できないものだ。ただし、将来負担になるという批判がある。

 これに対して優良投資なのだから心配無用である。しかも、教育投資は外部性を伴うので、国が率先して行うべきものだ。

 もうひとつは財政状況に対する誤解がある。借金1000兆円ガー、という話だ。これは、企業でいえば連結ベースバランスシート、これは政府では「統合政府」バランスシートになるが、そのバランスシートの左右をみろと、実は既に結論が出ていて、過度な心配は無用だ。先日、経済財政諮問会議の場で、ノーベル経済学者を受賞したスティグリッツ教授も同じことを言っていた。

 海外では、教育は投資という考え方により、国債発行の例もある。教育投資のための国債発行では、フランスのサルコジ国債が有名である。

 2009年6月、サルコジ大統領は、両院(上院:元老院、下院:国民議会)合同議会において、大規模な特別国債の発行を発表した。演説の中で大統領は、「国土整備や教育、研究、技術革新など、我々の未来にとって極めて重要な分野が多くあり、年間予算の厳しい枠組みの中では対応できない。我々がやり方を変えない限り、優先課題を掲げるだけで実現できない状態が続く。私は投資を犠牲にしない。投資なくして未来はない。」と述べ、未来への投資のための国債発行の重要性を強調した。

 日本も未来投資の時代が来た。

 

提出資料pdf「教育投資について」

 

 

   

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