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院生便り 第85回

院生便り 第85回
日本人は世界一の怠け者か?

博士後期課程   3年 

  櫻井 光行


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 昨春「日本経済新聞」に載っていた記事はショッキングなものだった。世論調査や人材コンサルティングを手掛けるアメリカのギャラップ社が、世界各国の企業を対象に実施した「従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査」の結果だ。それによると、日本の従業員に占める「熱意あふれる社員」の割合はわずか6%で、調査した139カ国中132位と最下位クラスだったのである。世界平均は15%で、米国は32%である。「やる気のない社員」は70%、「無気力な社員」は24%となっている(3つのカテゴリーを合計すると100%になる)。

 

 もしこの結果が本当なら、とんでもないことである。日本人は会社への帰属意識が高く、真面目に働くことが取り柄だったのではないのか? 以前に比べれば、「会社人間」は減っているだろうし、給与は上がらなくなったし、「ブラック企業」という言葉が普通に使われるようになったのは確かだが。一見熱心な社員も実は面従腹背ということなのだろうか?

 日本企業の労働生産性の低さは以前から問題にされてきた。労働時間は長いが、対価の取れない過剰なサービスをしていたり、上司への報告や承認に時間を取られていたり、仕事に完璧さを求めすぎていたり等、さまざまな理由が挙げられている。しかし、いずれも個人の意欲や能力を問題にするものではなく、日本企業(や社会)に根付いている文化や仕組みに起因するとされていたように思う。しかし、これほど日本人の仕事への熱意が低いのであれば、労働生産性が低いのは当たり前ということになりかねない。

 

 もしこの結果が本当なら、と書いたが、実は私はこの結果を少し疑っている。日経には日本と米国の結果しか載っていないが、調べてみたら他の一部の国の結果もわかった。「熱意あふれる社員」は、中国も6%で日本と同じ、韓国、香港、台湾といった東アジアの国々はほとんど変わらない数値である。一方、フィリピンやスリランカは35%を超えており、米国以上の高さとなっている。

 ギャラップ社は世界的にも有名な調査会社であり、サンプリング等の調査手法に間違いはないだろう。しかし、私が問題にしたいのは、どのような質問文、選択肢が使われたのかだ。調査は12の質問への回答結果を合成して、3つのカテゴリーに分類しているようである。例えば、「会社の使命や目的が、自分の仕事は重要だと感じさせてくれる」「職場でもっとも得意なことをする機会を毎日与えられている」等。しかし、このような質問に、日本人はどれだけ肯定的に回答するだろうか。日本人の国民性として(東アジアでも同様に?)他の国と比べて控えめな回答をするのではないか。

 限られた情報量からこれ以上の推測をするのは危険であろう。しかし、国際比較調査というものは、調査票をそのまま翻訳すればできるようなものではない。国によって、その調査が本当に同じものを測っているのか、他の指標と同様の相関が見られるのか等、さまざまな視点でチェックをする必要がある。いろいろ考えさせられる記事であった。

 

 

 

 

「院生便り」は本学の大学院生(修士課程および博士課程)が交代で大学院生活に関する「あれこれ」を述べます。次回をお楽しみに。

 

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